今回は、今まで何度か不妊症の海外研修でお世話になった南京中医薬大学付属病院の生殖医学科センター長を務めておられる談勇教授(中医師)と再会した際のお話をご紹介いたします。談勇先生の勤務する南京中医薬大学付属病院は中国でも2番目に大きなマンモス病院です。中西医結合の最先端医療を施行しており、男科の名医;徐福松先生と不妊症の名医;夏桂成先生のいらっしゃる国家プロジェクトを任された病院でもあります。
世界中を飛び回っておられる談勇先生は、この前日も台北から羽田に入られ銀座でのご講演をしていただきました。その合間を縫ってご指導いただく機会を得ることができました。お名前は男らしいのですが、とても大らかで優しさと厳しさを併せ持つ素敵な女性中医師です。日本の医科大学にも留学経験をお持ちで、ご専門が婦人科および不妊症なので、女性にかかわる不妊症や更年期障害などについて対談させていただきました。
現在、世界的に増えている女性の難治性疾患として挙げられるのは、がん、心臓病、不妊症だそうです。
その中でも遺伝性についてですが、子宮がんや乳がんなどの指標として、自分の母親よりも祖母・伯母・叔母・姉妹に発病した場合は、要注意とのことです。また、以前は内分泌系や社会的ストレスが病因の主流でしたが、現在はそこに環境ホルモンや異常気象の影響など人智を超えた原因が介在する為、疾病も複雑化しているようです。
また、「女性は血をもって本と為す」という教えがあるのですが、これは女性の体は良質の血液がたっぷりと蓄えられていると、生体機能も正常に働くことができて精神的にも肉体的にもつつがなく過ごせる、ということを意味します。
例えば、肝臓には蔵血の役割がありますが、肝の疏泄(そせつ)作用でも内科と婦人科によっては意味合いが異なります。
※疏泄(そせつ)作用:中医学における、「気、血、津液」の流れを整えたり、自律神経を調節する作用のこと
女性の一生の中で、「血液」は非常に大切で、月経・妊娠・出産・授乳・おりもの・産後の悪露などと密接な関わりがあるのです。血液や腎精・津液などは云わば「体の貯金」の様なもの。貯えが多ければ、いざという時に使えるけれど、借金(貧血および血虚)ばかりの人生は苦しいというものです。
こころにもからだにも余裕のある人生をもたらすには、良質の血と腎精が必要不可欠なのです。