学術シンポジウム2016~心と血脈~冠心病の舌診と臨床

投稿者: | 2016年5月31日

去る 5 月 29 日(日)、東京・銀座フェニックスホールにて、毎年恒例の学術シンポジウムに参加してきました。

今年のテーマは「心と血脈~冠心病の舌診と臨床」です。

近年、激増している脳血管疾患や心血管疾患などの循環器系疾患の予防や治療に大いに関係するものです。

まずは、舌診の権威でもある上海中医薬大学附属日本校教授の楊敏先生から店頭での舌診の見極め方のご講演がありました。

「舌診(ぜっしん)」とは、2000 年にわたる中医学の英知および先人たちが行った膨大な臨床実践により築かれた特有な診断法で、患者の主観的な感覚に影響されることが少ないので、客観的に病性・病位や体内状況を知ることができます。

中国で「冠心病」とは、冠状動脈硬化による虚血性疾患(狭心症・心筋梗塞など)を指しますが、中医学では狭心症と心筋梗塞の病理機序を「血液瘀阻(けつえきおそ)」とみなします。

心は「血脈をつかさどる」「舌に開竅(かいきょう)する」「舌は心の苗」と言われるように、心および全身の血液状態は舌によくあらわれます。

舌診により、異常なサインを早めに発見し、疾病の早期治療に努めることが大切です。

そこで今年は、中国・北京より「狭心症の救世主」と称された郭士魁先生の娘で直系継承弟子でもある郭維琴先生による来日講演がありました。

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そもそも、1966 年より中国国内では文化大革命が起こったのですが、その当時から狭心症をはじめとする心疾患が蔓延しており、国民を救うために 1971 年に当時の周恩来国家主席より「血管病を克服せよ!」という大号令が緊急対策として下されました。

中国全土をあげてのこの国家プロジェクトは、西洋医師と中医師が一致団結して、狭心症の予防と治療に関しての共同研究を研鑽し、初めての「中西医結合プロジェクト」を成し得ました。

そして、研究開発されたものが、のちに血管病に大きく貢献することになる「冠心Ⅱ号方」なのです。わが国でも 80 年代に研究開発が勧められ、より日本人に合った処方内容で現在では、「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」などの名称で国内でも広く使用されています。

イスクラ冠元顆粒90包1箱M

このような良品の開発もさることながら、『仁朮通人心』(仁術は人の心に通じる)という教えを元に見識と技術を備えている優秀な中医学の臨床医の人材育成に精を注がれた郭先生の姿勢に深い尊敬の念を抱きます。

現在では、北京市中医学薬管理局により設立された「郭士魁名家研究拠点」の中には、直系継承弟子・伝統弟子併せて 130 名になるようです。

現代、発症する疾病すべてに「瘀血(おけつ)」は何らかの形で関与しており、「活血化瘀(かっけつかお)」することで、様々な疾病の予防と治療に役立ちます。

西洋医学でも主流である狭心症のステント留置術の治療の前後ケアはもちろんのこと、頸動脈プラークや血管性認知症、老人に対する心機能保護、外傷性血瘀、更年期女性の胸痺、心腎陽虚型の胸痺などの重度の瘀血症状から、肩こりや頭痛・生理痛などの軽度の瘀血症状にまで功を奏する中医学の理論および経験論と活血化瘀製剤の働きに期待したいと思います。

そして、中西医結合による予防と治療で、日本の三大死因の一つとなっている心疾患を未然に防ぎ、真の健康寿命大国を目指したいものです。